この研究班の研究代表者をしています、国立成育医療研究センター総合診療部の窪田満と申します。
皆さん、「移行期医療」や「成人移行支援」という言葉を聞いたことがありますでしょうか。小児医療の進歩の結果、天国に行ってしまうこどもが減った一方、疾患を持ちながら成人する患者さんが増えてきています。そして、成人に達したときに、適切な「成人移行支援」が提供されていないために多くの課題が残されているのも事実です。
そこで、平成27年度から「小児慢性特定疾病児童成人移行期医療支援モデル事業」が国立成育医療研究センターを事務局として実施されました。その時から私は、「移行期医療」や「成人移行支援」に関わらせて頂いています。この事業は2年で終わったのですが、私はその後もこの問題に取り組み、厚生労働科学研究等の援助を得まして「成人移行支援コアガイド」を全国に配付したり、活動を継続してきました。小児科医や内科医向けの講演も数多くさせていただき、それによって、この数年でかなり医療者側の理解は深まってきたかなと実感しています。しかし、患者家族が置いてきぼりになっていないのか、いつも気になっていました。確かに何回か、患者家族向けの講演会も行いましたが、何か直接患者家族の皆さんにアプローチできないかと考えていました。今回、東京都移行期医療支援センターさんと協働で患者さん自身が入力する「慢性疾患成人移行アプリ」の開発に着手することができました。是非、皆さんに活用して頂ければと願っています。
国立成育医療研究センター総合診療部統括部長
窪田 満

| 所属機関・部署 | 氏 名 |
|---|---|
| 国立研究開発法人国立成育医療研究センター・総合診療部 | 〇 窪田 満 |
| 東京都立小児総合医療センター・循環器科 | 三浦 大 |
| 国立国際医療センター・総合診療科 | 稲垣 剛志 |
| いちのせファミリークリニック・総合診療科 | 一ノ瀬 英史 |
※東京都移行期医療支援センターと連携しています
○・・・研究代表者
アプリ開発:株式会社ミラボ


令和3年2月に閣議決定された「成育医療等基本方針」において、成育医療等の提供に関する施策に関する基本的な事項として、「移行期医療の支援等を総合的に推進する」と明記されました。また、厚生労働省は令和4年度の補助事業として「移行期医療支援体制実態調査」を行い、移行期医療支援センターの重要性が再認識されたところです。
ただし、患者目線での課題の抽出なくしては、病院の都合の問題と誤解されてしまうことになりかねません。今回の調査研究で成人移行支援アプリを開発、運用することにより、患者家族の「困りごと」を抽出することが可能になり、患者さん自身が主体的にアプリを活用することで、自立可能な患者ではその自立(自律)支援が進み、患者主体の成人移行支援を進めることができるようになります。また、自律的意思決定が困難な患者でも支援を受けやすくすることができます。その開発、運用を移行期医療支援センターと一緒に行うことによって、移行期医療支援センターの持つ地域の情報の提供や、webでの講演会の案内などが容易になります。そのため、今回の調査研究は、移行期医療支援センターを中心とした移行期医療支援体制の構築に寄与し、難病・小児慢性特定疾病対策の推進に貢献すると考えられます。